プログラムの概要
千葉大学大学院総合国際学位プログラムは、現代世界と現代日本が抱えるグローバルな諸課題を解決するため、社会課題と学術知を統合する高度な能力を有する人材を育成することを目的として創設されました。
このプログラムは、1)既存の学問領域を超え、分野を横断して問題の解決を目指した知識生産を行うトランスディシプリナリーな教育・研究、2)大括りの探求課題である「移民・難民研究」、「科学技術社会論」、「環境科学」、「身体論」(令和7年度から新規追加)をそれぞれ学修しつつ、学生が自主的・自律的に研究計画を立案するセルフ・デザインド・メジャー(自己設計専攻)、3)時間・空間・学問領域の制約を超えた新たな創造の場を形成するスマートラーニングの実現、という3つの特徴を有しています。また、現実に生起している問題の解決に貢献することができるように知の社会実装を重視し、新たな社会を構想して、価値を創造する人材を育成します。その目的を実現するために、特色あるカリキュラムを編成し、学生が、特定学問分野の知識を修得するだけでなく、学際性に対する認識を獲得するとともに、実践的な学修を通じて自己設計専攻を深化させることを目指しています。
学位プログラムとは
大学は、横断的な分野に係る教育課程を実施する上で特に必要があると認められる場合であって、教育研究に支障がないと認められる場合には、当該大学に置かれる2以上の研究科等との緊密な連係及び協力の下、当該2以上の研究科等が有する教員組織及び施設設備等の一部を用いて横断的な分野に係る教育課程を実施する研究科以外の基本組織を置くことができるという制度です。
千葉大学大学院総合国際学位プログラム(研究科等連係課程実施基本組織)は、大学院人文公共学府及び大学院融合理工学府(連係協力研究科等)と連係しながら教育課程等を実施していきます。
探求課題
大学院総合国際学位プログラムでは、中心的な学問分野として、以下の越境的・横断的な探求課題を設定しています。
(1)移民・難民研究
グローバル化にともない、地球規模でヒトが移動しています。より良い生活を求める人、戦火や災害を逃れた人の目から現在の国際社会はどう見えるでしょうか。政治・経済・社会・文化・生活のあらゆる側面から、移動する人びとの福利を実現するにはどうすれば良いか、移民・難民研究では公正な社会を実現するために、この問題に学際的に取り組みます。
(2)科学技術社会論
科学や技術の発展が人びとの未来を照らすとともに、新たな問題を引き起こしています。IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどによって社会はどう変わっていくか。科学や技術の政策やビッグサイエンスが社会に及ぼす影響は何か。科学、技術と社会の境界面で生じるさまざまな問題の解明に学際的に取り組みます。
(3)環境科学
地球規模の気候変動と温暖化にともない、人間や動植物を取り巻く環境はどう変化しているのか。私たちに身近な地域のエコロジー、社会環境や都市環境の改善は生活の質をどう向上させるのか。資源の保全や生物多様性を踏まえた持続可能な開発(SDGs)を実現するためにはどうすれば良いのか。学際的な研究に取り組みます。
(4)身体論(令和7年度から新規追加)
世界の情報化・記号化が進めば進むほど、逆に私たちは「からだ」を意識せざるを得なくなります。また現代社会を覆うさまざまな不調は、心と体の関係性の急速な変化に起因しているものも少なくないでしょう。しかし身体についての議論は、まだ始まったばかりです。そこでここでは、医学やスポーツ生理学・経営学、民俗学や演劇論など、多角的な視点で「からだ」を見つめ直し、学際的な身体論を展開します。
トランスディシプリナリー教育
大学院総合国際学位プログラムでは、トランスディシプリナリー(transdisciplinary)な教育研究を新たに展開します。従来、「学際的」という言葉にはいくつかの意味が存在しました。その中には、Aという教育研究分野とBという教育研究分野に共通する課題を見出し、そこで共通する視点・方法を活かそうとするクロスディシプリナリー(cross-disciplinary)な教育研究、複数の教育研究分野が協力し、それぞれの分野から適切な視点・方法を抽出して、それを統合して課題解決にあたろうとするインターディシプリナリー(interdisciplinary)な教育研究が挙げられます。
トランスディシプリナリーな教育研究は、それぞれの学問分野(ディシプリン)が本来抱えざるをえない認識論上の壁を超え、学問の枠組みそのものを必ずしも前提としない課題の解決にあたることを目的します。つまり、既存の学問領域を前提としてその協力を図るのではなく、問題解決・課題解決から出発し、それに必要な知識を生産する、つまり既存の学問分野にはない新たな学問領域を創造することが特徴となっています。
本学位プログラムでは、そうした能力と方向性を教授するため、学際認識科目を設け、問題解決を先行させた知識生産の方向性を具体的な事例を通じて認識するための教育を展開します。