知識集約型社会を支える人材育成事業 インテンシブ・イシュー教育プログラムのモデル展開

To examinees
受験生のみなさんへ

国際教養学部のカリキュラムと新しいカリキュラムII-BEATについて

千葉大学国際教養学部を知りたい受験生のみなさん

近年、「国際」の名前がつく学部や大学は増えてきました。このことばに「教養」がつく「国際教養」を学ぶ学部や大学は、何をするところなのかなと考えたりしませんか。

「国際」ということばと関連させたならば、漠然と「英語」ということばが浮かび、「留学」ということばが関連して出てくるでしょうか。ひょっとすると「国際」という日本語は、想像の拡がりが乏しいものかもしれません。この「国際」ということばについては、この文章の最後に改めて書いてみたいと思います。

さて、千葉大学国際教養学部で学生が育っていく上で第一義に考えているのは、「幅広く学問分野を越境できる意欲を持つこと」「ヒューリスティックな解を目指して考える能力を作ること」そして「発信力を磨くこと」にあります。そのことについて説明していきます。

幅広く学問分野を越境できる意欲を持つこと

国際教養学部は開設当初から文理混合の学びをめざしてカリキュラムを作ってきました。高校では文系、理系といった学びの方向性を分けて学ぶことが多いですね。しかしこれからの時代、文系、理系と分けた見方に囚われていては、多くの困難な新しい課題に取り組むことはできないと思います。

もちろん人には得意、不得意はあります。「私は物理や数学が苦手なんだな」という人もいるし「古典や歴史史料は読んでもわからない」という人もいれば「英語が苦手だ」という人もいるでしょうか。

しかしいろいろな分野を経験して、そして現代的課題を自分の問いとして見つけ、そしてそれに取り組むためのめざすべき学びを見つけていくのも、学びのスタイルだと思うのです。つまり課題先行型の学びです。「自分は文系だ」と決めつけずに、さまざまな実験機材にふれて、その実験の先にどのような社会が見えてくるのか、考えてみる。そういった機会も学びの場を、この学部では用意しています。

また「グローバルな活躍をしたい」と考えている人には、留学を含めてさまざまな国際的な活動を前提としたボランティア、インターンをする機会がこの学部には用意されています。そして、それと同時に地域=ローカルなことを学ぶ野外実習、PBL型の実習も用意しています。世界での活躍をめざす活動の中では、自らの足下である日本をいかに多角的に捉えていくかが重要です。日本の文化や社会で改めて深い学びをして、世界での活動を考えることも重要です。

このようにひとつの学問分野の方法(ディシプリン)に囚われずに、あらゆる体験を自分の中で混合させ、そしてやってみたい、取り組んでみたい課題を見つけていく。早くに専門を決めるのではなく、まずはさまざまな学問分野を越境して、専門分野を決めるLate Specialization をこの学部ではめざします。

そのためには果敢に多様な学問分野を越境できる環境をII-BEATでは用意します。

ヒューリスティックな解を目指して考える能力を作ること

高校生までの学びでは、解答がある問題に取り組むことが多いのではないでしょうか。受験勉強で出会う国語や数学には、完全正解(模範解答でしょうか)が存在しますね。しかし私たちの社会においては完全正解のない課題が多く存在しています。特に現代社会においては、そういった課題を正面から考える必要があります。例えば大きな災害が起こり、避難所に500人が避難してきたとします。そこに非常食の救援物資であるおにぎりが200個届いたとします。さてこの200個をどう配分するのか。その際「子どもや老人から配る」「抽選にする」「500個に達するまで配らない」など考えても、おそらくどれも不満は出てくるでしょう。その際、救援物資の継続した配送があり得るか、避難所で体調を崩している人はいないかなど、非常食であるおにぎりの消費期限をいつなのかと総合させると、配布するための順位付けをあらゆる情報を総合化して決断していくことになります。完全正解ではなくても限りなく正解に近い(この場合造語ですが「成解」があたるでしょうか)ものを正面から考えていく。それがヒューリスティックな解を目指して考えていくことになります。

完全解決が難しい課題に対して、さまざまなディシプリンを組み合わせ決断していくにはどうしたらよいか。II-BEATではそのような学びを、課題先行でさまざまな分野の科目を組み合わせて学ぶカリキュラムを用意します。

発信力を磨く

学びの成果や課題を発信していくためには、それをどう表現していくかに敏感であって欲しいと思います。研究成果を多くの人に発信、共有するためには、言語や数式といったいわゆる「記号」を道具とします。それを前提に私たちは、研究や課題提言などの事実を知り共有していきます。この記号が「英語」であれば、英語圏の人びとだけではなく多くの人が情報を共有できます。数式も、共有されている公式とその運用を前提に、研究成果を共有していきます。

英語を使うということは、多くの人に自らの研究を含む成果を共有してもらえることにもつながります。そのために国際教養学部では英語での発信力を意識したカリキュラムを用意してきました。

ただし、まずは一番身近に使う言語(多くの人は母国語でしょうか)でどう表現するか、それぞれの学生の中で考えて欲しいと思っています。そしてこの研究成果を伝えるには、誰に特に伝えたいかを考えたときに、実は英語以外でも、メキシコの人たちにだったらスペイン語かな、タイの人に伝えたいからタイ語を学びたいな、と考える人材に育って欲しいと考えます。

最後に-「国際」ではなく「民際」に基づく知識集約型人材の育成をめざして-

ここまでの話で「千葉大学国際教養学部」がめざす第一義は「課題解決型人材の育成」にあることを理解していただけたかと思います。課題解決とその成果発信の先に「国際」を意識すると考えてください。

そこで国際ですが、英語でいえばinternationalがあたりますが、哲学者の鶴見俊輔氏がこの日本語訳に対して国際(的)ではなく、民際(的)という表現をされました。国同士の交流ということよりも、人それぞれの交流を意識したことばで使われていました。

このことばの解釈に倣って、国際については、あらゆる人に対話をしていく民際的な意味で捉えていきたいと考えています。つまり言語を学ぶことは手段であり、各自が立てる現代の課題解決に取り組み、積極的に発信できる民際的な人材を育成するために、国際教養学部では、知識集約型人材育成のためのカリキュラムII-BEATに取り組んでいきます。

ちなみに本学国際教養学部の英語名称はCollege of Liberal Arts and Sciencesです。日本語名には国際はありますが、英語名にはありません。めざすべき学部の方向性が示す名称です。

もし関心を持ってもらえるならば、これまでの国際教養学部卒業生のメジャープロジェクト(卒業研究・卒業制作)の課題一覧を見てください。国際教養学部生が、多様な関心のもと課題に取り組んでいることを理解してもらえると思います。

メジャープロジェクト(卒業研究・卒業制作)